9刷出来!『ワールドクラスになるためのサッカートレーニング』“日本人なら世界一になる意志を持て!”(高岡英夫・談)
人間は意志の方向性によって、その結果が180度変わってしまう
はじめに、どなたもご存知のよく知られた話を一つさせてください。雪崩にあって埋まってしまった人物が、上へ上へ登ろうともがきながら埋もれた雪の中を登っていった時に、息が苦しく、雪は重く、身体も冷えてきて、やがて力尽きてしまいます。しかし、その力が尽きたところが雪の表面からあと10cmの距離だったとしたらどうでしょうか。その事実を知らない人物は失望して、そこで死んでしまうわけですが、仮にもしあと10cmで表に出られると知ることができたとしたら、絶対にあと10cmがんばって登り切って生還するはず、という話です。この話は「人間は意志の方向性によって、その結果が180度変わってしまう」という人間にとっての一つの真理あるいは法則を示しています。
日本がサッカーで世界一になることで、失った自信を取り戻す
私は、第二次世界大戦、特に太平洋戦争以降の現代の日本人にとって一番大切なのは、「意志」だと思っています。というのは、明治維新以来の欧化政策や富国強兵政策によって、日本人は日本の優れた文化や習慣を捨てて、捨てて、西洋の列強に並ぶべく努力してきて、いわば国民が一丸となってそれに向かってきました。自国の優れた文化や習慣を捨てることは辛かっただろうとは思うのですが、そのおかげで“にわか強国”を手に入れたのです。
しかしその結果、太平洋戦争で完膚なきまでに打ち負かされて、無条件降伏という事態にまで陥り、その後も占領政策によって日本のかろうじて残されていた文化や価値観、生き方というものを捨てざるを得ない状況になりました。つまりは、日本人の意志というものを完膚なきまでに叩きつぶされ、意志の方向までをもコントロールされた、という歴史があるのです。
ですから、戦後の日本人がいかに力を発揮しているように見える状況であっても、実はほとんど真の実力は発揮できていないのではないか、と私は考えているのです。なぜなら、今申し上げたように、すべてではないけれども結果を180度左右する可能性を持っている意志というものを、あの戦争によって完膚なきまでに失わされて、そしてコントロールされてしまったからです。そのような意味で、まずは手始めとして、世界最大のメジャースポーツであるサッカーにおいて、「日本人である我々は必ず世界一になる」という意志を持つことは、意外にもたいへんに重要なことである、と思っているのです。
20世紀、21世紀がそれ以前の時代に比べ、スポーツの時代になったという事実はどなたにも否定できないことだと思います。たいていのニュース番組でも一般のニュースとは別枠でスポーツニュースというものが存在することから見ても、スポーツはたいへん大きな現代文明の装置になってきているといえます。そして、その中の圧倒的最大のメジャースポーツがサッカーなのです。私はそのような意味で、先ほども申し上げたように、サッカーで日本が世界一になることは、日本人がすっかり失ってしまった意志を回復する上で、その初期過程において重要な役割を果たすに違いない、と考えているのです。
百数十年前までの日本人は、世界で最も優れた人たちだった
私は昔から武術系の種目に特に関心があり、仕事についても本質力の研究、開発、指導に打ち込んできたにもかかわらず、『サッカー日本代表が世界を制する日』、『ワールドクラスになるためのサッカートレーニング』、『サッカー世界一になりたい人だけが読む本』という、3冊のサッカー本を出してきました。3冊の本を並べて、よくご覧になってください。



すでにこれらの本をお読みの方は本の中身を改めて思い出していただきたいのですが、いずれも首尾一貫「日本人は世界一になれるんだ、日本人は世界一になるんだ!」という意志を決してもらうための本だということが、お分かりになるのではないでしょうか。
声高にいくら精神論を唱えたところで、皆さんが理解してくれるわけではないので、様々な分かりやすい具体論を示して、例えば「ブレーキ筋とアクセル筋」の話から始まり、「腸腰筋」、「ゆるむことと固まること」、最重要の身体意識である「センター」など世界最強の選手には欠かせないファクターを、サッカーのパフォーマンスを読み解くための装置として、スーパースターたちの秘密を解き明かしていったのです。そしてその上で、日本人なら必ずやれるのだ、と。
つまり、かつてのサッカー界のスーパースターであるジダンやロナウジーニョ、現代でいえば、メッシやクリスティアーノ・ロナウドのようなとてつもないパフォーマンスを軽々とやってのけるプレーヤーたちのメカニズムの本質は、実はこうなっているんだということを明らかにしたのです。そして、まっとうな意志をもって、トレーニングを積み、戦うならば、日本人もこれらのメカニズムを身につけ、世界最強になれることを、ハッキリと断言したのです。なぜなら、わずか百数十年前、江戸時代までの日本人は、これらの装置において世界で最も優れた人たちだったからです。私は3冊のサッカー本で、これらの証拠を突きつける形で論じてきました。それとともに、一見誰でも簡単に取り組めそうなトレーニング方法を紹介してきました。もちろん、そのトレーニング法は、実はそれぞれが非常に奥が深いのですが。
日本人なら世界一になれるし、絶対になるという意志を決し、実行せよ!
私が意志したこと、つまり3冊の本を出すことにおいての私の狙いは、サッカー選手や指導者、サポーターたち、それにマスコミやファン、さらにはファンではないが関心のある人たちなど、サッカーに大なり小なり関心のあるすべての人たちに、日本人がW杯のベスト16程度で争っているのはとんでもない話で、恥とは言わないものの、本来の日本人としてまったくあるべき姿ではないし、日本人である以上、世界一になれるはずだし、ならなければいけないし、絶対になる、という強烈な意志を決してもらうことでした。これら3冊の本を出して以来、日本のサッカー界は、徐々に、徐々に、そのような方向に動いてきており、まだまだ充分な大きさではなくとも、決してゼロではない手応えを、私は感じるようになってきています。
現在は、紙の本の出版事情が追い込まれて非常に悪い状況になっています。次々に数多くの本が絶版になっていくと同時に、新しい良い本がそう簡単には出せなくなってきているのです。そういう時代の中で、私のサッカー本も紙の本としては絶版にならなければならないという状況になってきています。その中で2冊目に出した『ワールドクラスになるためのサッカートレーニング』だけは、なんとか繋ぎたいという意志を出版社も持ってくださり、おかげさまでこの度、第9刷が出来ました。今回はそのご報告です。
日本サッカーを世界一にする、そういう強烈な意志をもって、皆さんに日本代表チームを応援していただければ、嬉しく思います。