高岡英夫がW杯の生中継を見ながらつぶやき、叫んだ「生の言葉」とは?
「高岡英夫のサッカーゆるトレーニングⅠ ベースof球軸」 (高岡英夫・談)
高岡英夫がW杯の生中継を見ながらつぶやき、叫んだ「生の言葉」とは?
「高岡英夫のサッカーゆるトレーニング」講座は、おかげさまでたいへん盛り上がっております。その主催者の私から、皆さんが何をいま一番お聞きになりたいかといえば、実際につい先日まで行われていた2010FIFAワールドカップの生中継を見ながら、私がその瞬間瞬間に何を思い、何を感じていたかということの「生の言葉」ではないでしょうか。
私はそういうことを語ることはめったにないのですが、やはり「サッカーゆるトレーニング」講座をこのように発表し、参加された皆さんと一緒にこれだけ盛り上がっているわけですから、今日は初めてそのW杯観戦時の「生の言葉」を語ってみたいと思います。
まず、対カメルーン戦の時についてお話します。あの試合の松井と本田の見事なコミュニケートについてはすでにお伝えしたと思うのですが、あれは本当に一瞬、ワンポイントの話ですよね。しかもわりと分析的な話です。一方、そうではない話も当然あるわけです。
まずカメルーン戦の開始前、ピッチに現れた日本代表を見た瞬間に、私は「あっ、日本が勝つな」とつぶやきました。「えっ、なんでそのように思えたのですか」と皆さんならお思いになるでしょう。答えは簡単、なぜなら、ゆるんでセンターが立っていたからです。誰がといえば、松井、本田、闘莉王、遠藤、大久保、それからいつも体が縮まっている前ももお兄さん(笑)の長友までもが、わずかながらゆるんでセンターが立つ傾向にあったのです。
この話をすると、皆さんも「おーっ、面白いな」と感じてくれると思うんですが、長友って前ももが結構まだ強いんですよ。でも、体格は小さいし、前ももが強かったらあんなに活躍できるわけないですよね。でもじつは、今回のW杯では、前ももが強いわりにゆるんでいて、センターが立っていたんですよ。
一戦ごとに前ももがズンズン細くなっていった長友
でもそういうと「前もも優位の人は、ゆるめないし、センターが立たないという話じゃなかったでしたっけ?!」って皆さんならお思いになるでしょう。たしかにほとんどの場合はその通りなんですが、人は変わるのです。このW杯が開催されている直前を含むわずか数週間で長友は変わったのです。つまり、次のようなことが言えるのです。
W杯期間中に、最初のスタート時と終わる時点でいえば、普通はその人の癖である前ももが強い選手は、終わる頃にはもっと前ももが強くなっていますよね。もし体が固まっている傾向にある選手は、もっと固まった状態で終わるのが普通です。ところが、長友についていうと、一戦ごとに前ももがズンズンと細くなっていきました。また、きっとそうなるだろうと予測しながら、僕はずっとそれを観察していたのです。そしたら、どんどんどんどん肩も下がってきたんです。まさにそれは、ゆるんだ証拠です。そして、前ももが細くゆるんでくると同時にセンターも立ち上がっていったのです。だから表情もスッキリ、体もタラーンとして、活躍できたのです。
ところで私は、今回のW杯開催前後に発行された数多くのサッカー関係雑誌、専門誌を集めてきて「今回の日本代表チームは今までと違う」という認識をしている専門家がいないかという観点で探してみました。そしたらありました。「今回の代表チームは、一見やる気があるようには見えない」と。つまり僕らの言葉でいえば「アグレッシブでやってやるぞという気持ち、いわば“熱力”が感じられない」ということです。専門家も「今までのチームでそういう気持ちが一番弱い」とコメントしていました。
しかし、やる気がないかといったらそうではなくて「皆、淡々と静かにあまりムキになることも功名心もそういうところが本当になくて、まったく不思議なチーム。今までにはない新しいチームだ」という意見が複数見られたのです。僕はそれを読んで「やっぱりそうだ」と思ったのです。
つまり私たちの運動科学の知識や見方を持っていれば「ゆるんでセンターが立ってきている」と、すぐに説明できますが、そのような概念や見方がなければ上記の専門家達のような言い方しかできないのは、仕方ないでしょう。
ようやく私が撒いている“塩”が効いてきた
ですから、やっぱり背景はすでにあったということですね。W杯のグループリーグであのような戦い方をできるチームになりつつあった、タイミングもギリギリ、程度もギリギリでしたが、何とかその方向に向かって進んできたということです。それはなぜかといえば、世界のスポーツの巨大なうねりの一番のベース、最根本にあるもの、つまり私の主張し続けてきた“塩”が効いてきたからなのです。私の撒いている塩というのは、世界のスポーツの巨大なうねりや歴史などと一切無関係に、あたかも根無し草のように撒いているわけではないのです。
皆さんもよくご存知の通り、私は3冊のサッカートレーニング本を出して、サッカーを取り巻くスポーツ全体の巨大なうねりの中で一番根幹にあることを写真と言葉で誰でもわかるように(しかも日本人の自意識を突っつくように)して語ってきたわけです。これはスポーツ全体の巨大なうねりの最重要事なのですから、効いてこなければおかしいのです。いつまでたってもまったく効かないとしたら、石ころか金属で選手やチームができている場合だけでしょう(笑)。
生きている人間である限り、それは動物であり生物であるわけですから、塩を振ったら効くでしょう。塩を振られたら体の中に浸み通るでしょう。だから効かないはずがないのです。ですが、どのくらい時間がかかって、どのように効いていくかというのはケースバイケースですから、その部分については私にも何ともいえないところなのです。しかし塩を撒き続けてきた結果、ようやく今回の代表チームにその効果がうっすらと現れてきたのです。つまり今回の代表チームの中に、今までのチームと違って、運動科学の専門概念と見方で言う「ゆるんでいる」、「センターが立ってきている」という事実として現れてきているのだと、私は考えているのですが、皆さんはどうお考えでしょうか。
しかし漬け物でいえば「少しは食べられるが、まだ薄いじゃないか」、「塩味が思うように漬いていないじゃないか」、「まだ生で固いところが残っているじゃないか」という状態です。皆さんもよく共感していただけると思いますが、きゅうりでもたくあんでもああいう漬け物を食べたときに、塩がうまく染み込んで、ちょっとぐずぐずになって柔らかくなっていて、生のバリバリとしたのと違うあの柔らかなパリパリ感が、なんともいえない美味につながるわけですよね。あのような状態なって初めて、本物の漬け物といえるわけじゃないですか。あのしっとりとパリッとしたきゅうりの漬け物やたくあんは、本当に美味しいですからね。そのような意味でいまの日本代表は、2、3歩を踏み出して、漬け物で例えれば「まだ生で固いところがたくさん残っている」という段階です。
これ日本人できるぜ、球軸トレーニングをやれば!
それからもう二つほど面白い話をしましょう。
まずは、スペイン代表のビジャのゴールとか、イニエスタのパスやらがTVのシーンで出てくるじゃないですか。その瞬間、高岡英夫が何を言ったかというと、「素晴しいな」という言葉よりも先に「これ、日本人できるよ」と、こう言ったのです。それと同時に「球軸トレーニングをやればできるよ」と…。そして、またすごいシーンが出てくると「これ日本人できるよ、球軸トレーニングをやれば」と。そんなことを十数回ほどつぶやいたでしょうか。
そばに何度か女房のNidoさんがいましたから、彼女はそのうち4回くらいは聞いていたのではないかと思いますが、もうその気になっておりましたね。「もう、球軸トレーニングを早くやればいいのに日本代表は。なんでやらないのかしらね」と言ってます、彼女は(笑)。
つまり僕らには、すでにハッキリと見えているんです。あのスペイン代表のシャビ、イニエスタのパスやビジャのゴール、そしてオランダ代表のロッベンやスナイデルのパフォーマンスを見て、あんなのできないよと日本のサッカー関係者の方々は思っているかもしれないのですが、僕はまったく逆なのです。「あんなのできるよ」って。あんなのと言ってしまったら、世界トップレベルのサッカー選手である彼らに対して申し訳ないのですが、「あっ!すごい全然できないよ」と言っている人には「あんなのできるよ」、「球軸トレーニングをやれば間違いなくできるよ」って言ってあげなければ真実が伝わりにくいでしょう。その「球軸トレーニング」を今夏の「サッカーゆるトレーニング」では、5月よりもさらによ~くわかるようにお教えしたいと、気合を入れています。地球の中心である地芯からセンターを立ち上げるその威力は、体験した皆さんの「マジックとしか思えない」、「魔法のようだ」の言葉通り、凄まじいの一言ですから、サッカーとは縁のない方々でも絶対に役に立つと思いますよ。
松井はセンター四力が使えれば、まだまだ伸びる
それから最後、3番目の話に入りたいと思います。せっかく松井と本田についての話をすでに語ったのですから、もう少し専門的に解説していきましょう。才能豊かな彼らですが、何ができていて、何ができていないかという話をします。
松井は浮身(ふしん)と沈身(ちんしん)ができていません。センターというのは、ただまっすぐ通るだけではなくて、下の地芯から引っ張られる力、地芯へ向かって上から落とされる力、それから地芯から上の天芯へと突き上げられる力、天芯から吊られる力という四力があるのですが、それが弱い。その開発をしたら、まだ駆け出しの選手だったのか、というくらい十分な伸びしろがあるんです。
そのセンターの四力が使えていないから水平面上の動きでしか、ポジショニングもボールキープもドリブル突破も、できないのです。さらにセンターが通ってくると全方向認知能力が高くなってくるのですが、全方向認知能力が十分に開発されるほどに、まだセンターが開発できていないんですよ。この辺がまったく惜しい限りだよね。この水準でセンターができてくれば3人くらいへっちゃらで、ときには4人とか5人とか引きずり回して、抜きまくって、それでラストパス、または自分でゴールというところまで行くんですけどね。
パラグアイ戦で惜しいシュートがあったでしょう。松井が相手のDFのミスに乗じて打ったミドルシュートが相手のゴールキーパーの上を越えてゴール・バーを叩いてしまったシーンですが、もう少し低ければゴールというところでしたよね。ああいうところなんかもこの四力があって、もう少し体を上の天芯から吊ることができれば、重心がより高い前の位置から、十分に蹴り足が脱力して後に残った威力のあるボールを蹴れるわけですよ。そうするとずっと高速のボールが相手のゴールキーパーの反応より早くその上を越してクロスバーの下に突き刺さるというシュートが難なくできてしまうんですけどね。その辺の本当に結果としては、重心のわずか数センチの違いの問題なんですが、できるできないという結果は非常に大きな差で、その原因はやはりセンターの中身がまだ十分に育っていないところにあると、私は見ているんです。非常に惜しいですよ。
本田は下軸を改善できれば、世界トップクラスの選手になれる
そして次に本田の話に入りましょう。彼は上軸は非常に良いんですよ。これは運動科学をよく学んでいる皆さんなら、強く感じられているのではないでしょうか。しかし一方、下軸は足りません。つまり上軸の強い効果により、本人の心理面とか、認知能力の方が高いのです、彼は。そのような意味でメンタル面が強いのですが、それが姿にもよく現れていますね。
それから動きにおいても上軸が強いということは、やはりそれなりの動きやポジショニングの良さとか、そういったものの強さは発揮するんです、接触プレーとかでもね。上軸の強さで対抗している。ところが下が弱いから、まだ踏ん張っているし、バタバタしているんです。上をみるとカッコいいけど、下を見るとカッコ悪い。その典型的な選手ですね。
皆さんがこのようにちゃんと見えているかどうか、皆さんの運動科学的な認識力がこの話から試されるということですね。典型的に「サッカーゆるトレーニング」で指導している「インサイド・オーバーセンター・トレーニング」をやらせてあげたいね。やっぱり足を、下半身全体をゆるませながら、地球の中心である地芯から、そしてボールの中心を貫いてさらに立ち上がってくるそのセンターに下半身から身を任せていくという、そのトレーニングをやらせてあげたい。
あとは、少し「サッカーゆるトレーニング」とは別の講座の話になってしまいますが、拘束前腿、拘束外腿、それから股関節まわりの拘束を取って、転子をクッキリと強化してあげたいね。それから、すね回りにも拘束が残っているからあれも取ってあげたい。さらに拘束外足も取ってあげたいし、ウナももうちょっと強くして、通してあげたいしね。この辺の詳細については「夏の太もも周りスッキリ解消法初級」のページをご覧ください。下から改善することができれば、彼はスッゴイ!いい選手になるよ。ものすごい可能性を持っているからね、彼は。なんせ上軸は通っているわけですから。そういうもっともっと完璧なまでにセンターが開発された本田や松井を見たいよね。
そして他の選手もたくさん可能性を持っているんです。場合によっては、二人以上に可能性を持っている選手もいるんです。だけどここでは全員のことは話してあげられないので、松井選手と本田選手に代表として登場してもらったということをご理解ください。そしてぜひぜひ皆さんサッカーをおやりになる方もおやりにならない方も、この猛暑の夏を「サッカーゆるトレーニング」で、大いにますます私と共に盛り上がろうではありませんか。
(了)
2010年8月9日(月)15:30~20:00 大阪開催「高岡英夫のサッカーゆるトレーニングⅠ ベースof球軸」
2010年8月12日(木)15:30~20:00 東京開催「高岡英夫のサッカーゆるトレーニングⅠ ベースof球軸」
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